THE ROSE MAKER (C) 2020 ESTRELLA PRODUCTIONS - FRANCE 3 CINEMA - AUVERGNE-RHONE-ALPES CINEMA

映画『ローズメイカー 奇跡のバラ』

さわやかな小品の映画。テーマはさりげない奇跡。
フランスらしい意味不明の冗談らしいやり取りがあるが、それも含めて、バラの好きな人、農村を楽しみたい人には憩いのひと時だ。
新しい品種のバラの育成に執念をもやす主人公は、それ以外ならふつうのおばさんに見えるカトリーヌ・フロ。たんたんと執念をもやして月日がたった果てに、ある出来事が起きてハッピーエンドとなる。そのことを、映画の中で、奇跡と呼んでいるのかどうか、フランス語が分からないので不明だが、ひょっとしたら、日本語タイトルをつけた人の先走りかもしれない。
むしろ、奇跡などとよばずに、ただそういうことが起こりましたよ、程度のほうが、映画としては深みを増すように思った。
ここの塩梅を説明するのはなかなか難しいが、たとえば原題は「la fine fleur」だが、そうなんですよ、というほうが、昔の日本語でいう「いとおかし」の世界、というか、奥ゆかしいおかしみの世界と言えるかもしれない。
カメラや編集や演出にもゆきとどかない欠落感があって、たぶんこちらの感受性の欠落が対比されるような仕方で顕在している。
掘り下げていくと、フランスが抱えている人種や文化や性差などへの複雑な感情も下地にあるようにも見える。
そう考えると、映画の出だしが、「Red Roses for a Blue Lady」という英語の歌で始まるのは、バラを国花としているイギリスへのご挨拶ともとれるし、最後に主人公が目をかける若者が調香師として旅立つのは、香水の国フランスの矜持ともとれる。

(h.s)

©hiroshi sano

監督 ピエール・ピノー
公開 2021年5月

 

評価
3.4/5

映画『 青くて痛くて脆い』

完璧な青春なんて、ありそうもない。だれだって、いびつな青春をかかえて、育ってきた。 いびつな同士が、重なり合って、隙間をつくりながら、相手と世界を理解していく、そんな映画だ。

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© 2021.Hiroshi Sano

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