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映画『Mr.ノーバディ』

中高年の夢物語。
イントロは、主人公がいかに「普通」か、が繰り返し描かれるが、描き方が秀逸。
日常の断片の繰り返しと印象的な炸裂音。朝のゴミ出しに失敗し、実業家の妻と違って、マイカーもなく、義父の経営する工場にバス通勤。疲れて帰ってくれば、夜は妻とセックスレス。
現代の中高年のすべてがつまっているような男が、ある時突如変貌する。というか、本当の自分を現す。
本当の俺はこんなんじゃない、という思いを映画は一挙にかなえていく。・・はず。
全体についていえば、やや過度の殺しのシーン(映画『ザ・ファブル』同様、殺し屋がなぜかうじゃうじゃ出現する)、を除けば、死にかけの殺し屋との対話みたいのが、いくつかあって、これがじんわり効いていると思う。あとは、ホームアローンみたいな仕掛けで、悪役たちをやっつけていく。
イントロの秀逸さにくらべると、悪役側の盛り立て方が、なんとなく腑に落ちない。
振り返ると、馬力を効かせた車の入手とか、負傷する主人公の回復とか、あまり感情を表さない主人公のたんたんとした仕草とか、蘇ってくるものがあるが、ちぐはぐ感はいなめない。
多分、主人公が対峙する悪者はかなり悪が、と映画で規定されているが、その悪役ぶりにしては、感情の振幅が激しいのが、この映画の計算違いかもしれない。

(h.s)

©hiroshi sano

監督 イリヤ・ナイシュラー
公開 2021年6月

 

評価
3.8/5

映画『 青くて痛くて脆い』

完璧な青春なんて、ありそうもない。だれだって、いびつな青春をかかえて、育ってきた。 いびつな同士が、重なり合って、隙間をつくりながら、相手と世界を理解していく、そんな映画だ。

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