クリスティの「オリエント急行殺人事件」のような、密室殺人事件を思わせるような趣向の映画だが、眼目は殺人の方法よりは、犯人と動機。
原案の秋元康の作品は、「NG」というテレビドラマが面白かったので、この映画も期待して観に行った。
舞台は外洋に出れる大きな船の中。人数は「オリエント急行」よりも多くて30人くらい。
シリアスな推理ものではなくて、密室殺人をネタにした、ハチャメチャ劇に近いが、秋元のすごいところは、きちんと整えるべきところは整えていること。
狂言回し役の田中圭もあと少しで過剰、というレベルで抑えられていてよかった。
多用な人物が登場するが、ちょうど将棋の駒のような役割を与えられていて、映画全体の枠にきちっと収められている。
たとえば、犯人には特異な性癖があるが、それを説明する駒役がいる、といった具合だ。
この映画の予告編にはまったく食指が動かなかったが、本編には危惧された安易さがなかったのは意外だった。
ご都合主義的な駒もあったが、映画なのだからそれも必要。
冒頭の険悪なマンションの管理組合の会合から、なぜ急にそのメンバーが船上の結婚式パーティーにいるのかも、映画にとってはいくらきってもよい切り札だと教えてくれる。
気楽に観ればいいのだ、という思いで席についたが、最後まで、裏切られることなく続いた。
(h.s)