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そうは言っても映画『万事快調 オールグリーンズ』

(前半は)素晴らしい映画。なにが素晴らしいか語ろうとするだけでもこちらがゾクゾクするくらい。

まじ、映画『愚か者の身分』を超えたのでは!と一時思ったくらい。

出だしのカットからはじまって、長い長いイントロの末に女子高生三人が偶然ひき逃げを目撃する「イバラキのド田舎のひろい十字路」に至るまでは、まったく新しい映画が誕生するのだといった目撃者のうれしさがあった。

三人とも、大なり小なり家庭に問題を抱えていて、その機能不全をそれぞれの方法で生き抜いて来ている。ぐっと引き寄せられる構図のカットとテンポのよい編集で進むこの映画はいったい何だ(新鮮な感じ)。

撮影が凄い。カメラマンは齊藤領。略歴は、カリフォルニア州立大学フラートン校卒業(ハリウッドに特化の学校?)、東京芸大大学院卒業。「スチールカメラマンからキャリアをスタート、美しい瞬間を切り抜くことを得意とする」とある。(学歴で計りたくはないが、ガッツはある)なるほど!

前半はどのカットもキマッテる!文句のつけようがない。それだけでも奇跡かもしれない(ちょっと言い過ぎかな?)。

(『愚か者の身分』の場合だと、色使いや躍動感のある絵作りで印象に残る作品となった。)

主演は南沙良で、彼女の内向きの役作り(?素)がいい。ラッパーとしての初々しさもいい(当方ラップが好きになった)。彼女の良さもカメラは引き出していた。

三人組のあと二人は、最近よく見かける出口夏希と、私は初めて見た吉田美月喜だが、吉田が味わい深くてよかった。

話は、女の子を食い物にしようとするワルのラッパー先輩が登場するのだが、そいつをやっつけた主人公が、偶然手に入れた大麻の種を使って、高校の屋上で大麻を栽培して、お金を作ろうとする流れに、映画の本筋は移行していく。

このあたりは、大麻という微妙な題材を扱いながら、かなりふっきれた感じで展開している。ただ映画のテンポからいうと、ワルの先輩が登場する前後などから、時折まどろっこしい部分が出現し始める。

それでも、主人公に心をよせるラッパー男子が、大麻でラリッて大けがをして入院しているのを見舞うシーンなど、省略と切り替えの妙など、ドライな感性の良さがそこここに見て取れる。

まったくの推測だが、全体を通して、カメラマンの意図が強力な援軍として機能していたのではないだろうか。前半のイントロの部分では、主人公たち3人の紹介をするという映画のベクトルは明瞭だ。そんな時にカメラの力が発揮されていた。

後半にむけて、そのベクトルに揺らぎが出てきて、カメラの腰がいまいち座らなかった、という印象だった。(ちょっと残念)

もちろん監督・脚本の児山隆も優れた仕事をしたのは間違いない。最後の高校の卒業式でのオチも、そのドタバタ加減にはやや目をつぶるとして、映画全体を通してみれば、型破りな高校生の物語としては、世界に通用する映画としての価値を備えているような気がした。そのことは、カメラマンがアメリカ帰りということを知る前に感じていたことだった。

ひょっとしたらだが、これがラップなのかもしれない。