映画『爆弾』

評判は悪くないようだが、はたして評判どおりだろうか。

佐藤二朗はわるくない。よくもわるくも佐藤二朗は佐藤二朗、を押し通していた。

ただ全体的に長すぎる(多分理由があるのだろう)。

ストーリーを大まかにいうと、のらりくらり謎かけスタイルで犯行をほのめかす佐藤に対して入れ替わり立ち代わり3人の刑事が交代して事件の真相を追求していくというもの。

映画の構成を考えるうえで、仮に、全体を6つに分けて、それぞれに佐藤というカードがあるとする。

一枚目と2枚目の佐藤のカードの間に入るのが、所轄の刑事の染谷将太だ。佐藤を尋問するが、霊感による爆発の予言だという佐藤の主張をくずせずに、担当から外されてしまう。役柄としては前払い的な脇役だが染谷なりの存在感を発揮していて悪くない。

2枚目と3枚目の間に入るのが渡部篤郎だ。渡部は本庁からやって来た幹部刑事の役で、やや年配で深みのある人物。佐藤との謎かけのやりとりも抑制を利かせてうまくこなしていて、見ている側もはらはらする。普通なら退屈になりかねない部分だが、渡部の演技は出色だと感じた。映画全体をとおして、MVPを献上したい。

そして、3枚目と4枚目の間にはいる刑事が、渡部の部下で謎解きが得意の変わり者の山田裕貴だ。自信過剰の薄っぺらな人物になってしまっていて、本当はどうも、悪を内包する深みのある役らしいが、それが伝わらずに終盤にむかってしまう。映画『爆弾』はここに不発弾一個を抱えてしまった。

さて、4枚目と5枚目にはなにが入るのだろう。それは、真犯人役の片岡千之助だ。本来は映画の構成上説得力のある動機がここで明かされなければならないが、ほとんどない。というか、監督の計算違い(あるいは計算通り?)なのか、犯人の存在感が吹けばとぶような薄さだ。

そして、5枚目と6枚目の間に入るのが、犯人片岡千之助の母親役で、佐藤ともつながりがあり、所轄署に拘置されている佐藤を殺そうと爆弾を持参する夏川結衣だ。これも不発だった。

東京全域爆弾注意報とでもいえるシチュエーションサスペンスだが、あえて佐藤と周囲の登場人物との心理劇に軸を移してしまったのだろうか。

だとしたら、佐藤と夏川との間で起きた出来事を説明したら、佐藤のどす黒い闇がきっと見どころになった印象深い映画になっただろう、と思った。

note みとまと より転載)