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映画『最後の決闘裁判』

前知識なしで、映画を観てなるべく感じたままを書くようにしているが、この映画についてはその禁を犯して、ちょっとだけ制作のいきさつを事前に知ってしまった。
それによると、ベースにあるのは黒沢明の「羅生門」。つまり、一つの出来事について三者三様のとらえ方があることを映画化すること。題材はひとりの女性を巡って二人の男が決闘すること。マット・デーモンとベン・アフレックが熱心に企画を持ち込んでリドリー・スコット監督が腰をあげた、ということらしい。
で、映画の感想はというと、、
迫力のある決闘シーンや中世の田園や泥だらけのパリなど、見どころもあって一応最後まで観てしまった。ただどこにも感動がなかったので、とまどって評をなかなか書くことが出来なかった。
また事前に事情を知ったので、同じシーンをちょっとだけ演出を変えて再撮影すればよいので、ボリュームのわりには手間や予算が省ける、など余計なことを考えてみていた。
しかし、いまになって考えると、根本的な欠陥があるかもしれないと思うようになった。
この映画は簡単に言えば、男Aと男Bが、女Cに対してある思いをいだくが、その思いとは全く別のところに女Cの思いはあった、ということらしい。もっと簡単に言えば、性行為についてのAとBの思い込みは、女Cと全く相いれない、ということのようだ。つまり、全く理解力のない男への啓蒙の映画となっている。ので、そういう啓蒙映画としてつくられたのなら、成立はしている。
ただし、三者三様の見方があるという永遠の真実は、深遠なテーマでもあって、それを提示する映画にはなっていなかった。
仮定の話だが、男二人の心理をもうすこし深めていれば、啓蒙であることも成功したし、男たちの側にもなんらかの運命的な拘束があって、どうにも動かせない、3人の事情認識がきちんと描かれて、深遠な真実についての余韻を観客に残すことができたかもしれない。

(h.s)

©hiroshi sano

監督 リドリー・スコット
公開 2021年10月

評価
3.5/5

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