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映画『レミニセンス』

舞台は(多分地球温暖化で)水没している高層都市マイアミ。そして、舞台装置は、人の記憶を可視化できる機械だ。
惚れっぽい主人公が、失踪した女を追い求めていく映画。
そしてクライマックスは、記憶再現装置の中で、女と愛を語り合うシーン。と、ここまで書くと、なんだか軽い印象だが、どうしてどうして、幾重にもなぞが絡み合った重量感のある映画。
すべての登場人物が最後の謎解きに向かう伏線になっているのも見事だが、記憶再現装置がストーリーの展開の中で巧みに使われているのも感心させられる。
通常フラッシュバックは、映画の中の当事者以外には、映画の観客しか知らないというのが、お約束ごとだが、記憶再現装置は、誰の記憶であれ、映画の他の登場人物たちにも等しく見れる設定になっている。そのおかげで、登場人物たちの動きが思いのほか豊かで説得力がある。さらにいくつものナゾが破綻なくつながりあっていく様は、よく練られた構成だと思わせる。
水没しかけた線路を列車が走るシーンは、忘れもしない「千と千尋」を思い出させて、時空を導かれていくには、やはりこれなんだ、と思わせるシーンもあったりしてうれしい。
その他登場人物たちもよく性格づけられていて、とくに主人公の助手役の女性は、主人公に想いをよせながら、危機の時は、銃撃で主人公を救うという腕前も持っている。
二人とも戦争体験があって激しいサバイバルを体験してきたことをうかがわせるが、主人公は武器を使うことにはおくてで、助手の女性は、射撃でものごとを片付ける派という性格付けは、映画冒頭から設定されていて、それが全編を通じて生きている。
かなり出来の良い映画だ。ただし、なぞが細かすぎて、観る側が気が抜けないのが欠点と言える。
それでも、映画のさまざまな要素のバランスがよくて、映画のコクといったものを濃密にして、十分に楽しませてくれた。

(h.s)

©hiroshi sano

監督 リサ・ジョイ
公開 2021年9月

評価
4.5/5
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