映画『エミリア・ペレス』

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一見に値する映画。
かいつまんで言えば、メキシコの麻薬王が残虐をつくしながら自分自身に違和感を感じ、なんと性転換手術で女性になり、それまでの非道をくいるような善行をおこない、最後は偶像の救世主となる、という話。
日本公開は2025年3月なので、もう何か月もたってしまった(現在12月)。その間、この映画について書きたい書きたいと思いながら、なかなか書けなかったのはこの映画から受ける官能的な部分がこれまでの凡百の映画とはまったく異質だったからだろうと思う。
女優カルラ・ソフィア・ガスコン(トランスジェンダー俳優)は麻薬王役と、その後のエミリア役の二役をこなすわけだが、前知識なしで見た私は、前半の暗く生暖かい血の匂いのする悪行の地獄の部分でかなりノックアウトされた。
その後、包帯だらけで凄惨な手術をへて、秘密裡にエミリアという女性となって、麻薬王は死んだという設定にして、妻と子どもを自分のもとに引き寄せて、今度は善行を積むという展開になる。
これだけ聞くと、信じられないよ、となるのが普通だと思うし、私も多分半信半疑で映画を観ていたと思う。
ところが、縦横無尽のガスコン嬢の存在感は半端なく圧倒的で、恋までしたりして、型破り加減が、痛快さにかわっていく不思議な感覚を味わった。
この女優の映画をまた観てみたいものだ。
(by 佐野ヒロシ)